アメリカ人詩人、作曲家、アーティストであり、1960年代に展開した前衛芸術運動「フルクサス」の共同創設者の一人であるディック・ヒギンズ（Dick Higgins）の作品集。本書は、1970年代初頭に作者によって編集され、これまで未発表だった伝説的出版社「Something Else Press」の名作であるテキストを収録したアンソロジーである。ジョン・ケージ（John Cage）、アル・ハンセン（Al Hansen）、クレス・オルデンバーグ（Claes Oldenburg）など、多くのアーティストの作品が掲載されている。

本書は、作者が1963年に「フルクサス」やその他の実験的なアーティストを紹介するために立ち上げた「Something Else Press」の設立を記念するために構想した一冊である。作者が存命中には実現しなかったが、1960年代の前衛的であり驚くべき数々の創造性が集約されている。「Something Else Press」は、当時最も先鋭的な芸術や文学を書籍の形で出版し、1960年代以降国際的に繁栄した「アーティストブック」という媒体の基礎と雛形を世に送り出した。

本書には、クレス・オルデンバーグの『Store Days』、ジョン・ケージの『Notations』、エメット・ウィリアムス（Emmett Williams）の『An Anthology of Concrete Poetry』など、「Something Else Press」の貴重で絶版の名作からの選りすぐりが収められている。また、リチャード・コステラネッツ（Richard Kostelanetz）のアンソロジー『Breakthrough Fictioneers』、ジャクソン・マック・ロー（Jackson Mac Low）の画期的な詩集『Stanzas for Iris Lezak』、ガートルード・スタイン（Gertrude Stein）の『Matisse Picasso and Gertrude Stein』、バーン・ポーター（Bern Porter）の『I’ve Left』、ヴォルフ・フォステル（Wolf Vostell）の『Dé-coll/age Happenings』、アル・ハンセン（Al Hansen）の「A Primer of Happenings & Time/Space Art」なども収録されている。さらに、ロベール・フィリュウ（Robert Filliou）、イアン・ハミルトン・フィンレイ（Ian Hamilton Finlay）、アリソン・ノウルズ（Alison Knowles）、ナム・ジュン・パイク（Nam June Paik）、フィリップ・コーナー（Philip Corner）、ダニエル・スペーリ（Daniel Spoerri）、アンドレ・トムキンス（André Thomkins）、リチャード・メルツァー（Richard Meltzer）などによるパンフレットやアーティストプロジェクトも掲載されている。また、ヒュー・フォックス（Hugh Fox）による重要なチェックリスト・書誌と、作者による1973年の序文が本書を完成に導いている。