ポーランド人アーティスト、カロリナ・ヴォイタス（Karolina Wojtas）の作品集。作者が2017年から発展させてきた「Abzgram」プロジェクトは、突飛な構図や過剰なほどの色鮮やかさ、ぼかしや激しいフラッシュの使用を通して、考えられる限りの写真にまつわるあらゆるルールを超えていく。時に偶発的であり、時に演出されたシナリオを写しとって様々な素材にプリントし、展示空間を部屋のようなサイズのインスタレーションに生まれ変わらせ、その中を回遊できるようにする。作者の複雑なマルチメディア作品は、軍国主義を思わせるほど子供に規則を強制するポーランドの厳格な学校制度に対する痛烈な皮肉が込められている。子供をじっと立たせ、互いに触れることを禁じ、両手を体の横に沿わせ、真っ直ぐ前を見るように指示をする。作者は、再演する過程を通して、鑑賞者をそれぞれの幼少期へと誘う。

本書は2023年に「アレクサンダー・トゥツェック財団（Alexander Tutsek Stiftung）」の協力のもと「C/Oベルリン（C/O Berlin）」が主催する「C/O Berlin Talent Award 2022」の受賞の副賞として、また受賞を記念して「C/Oベルリン」で2023年1月から5月の間に開催された展覧会に伴い刊行された。写真史・写真論の研究者、キュレーターであるマティアス・グルンディッヒ（Matthias Gründig）による文章を収録。