OPENING THE SKY by Larry Fink
アメリカ人フォトグラファー、ラリー・フィンク(Larry Fink)の作品集。1980年にシアトル美術館から助成を受けた当時、「私の守護星が昇り始めたところでした。私は呼ばれたのです。」と作者は語った。その時既に自分自身も山男のような存在となっていたが、ワシントン州西部のオリンピック半島を覆う原生林に分け入って巨木を切り倒すという厳しい仕事を生業とするたくましい男たちの写真を撮り出したのはごく自然な流れであった。被写体に選んだのは、どこにも属さずに少数の男たちを集めて独立して伐採を行う「ジッポ・ロガー(gyppo logger)」のデイヴィ―・マッカードル(Davey McCardle)だったが、本シリーズの制作においてこの人物は大きな役割を果たすこととなった。
「片手にフラッシュ、20㎏弱もある重たい荷物を背負い、Mamiya C330とLeica M2を持って山に入った私は、一瞬先がどうなるのかもわからない毎日を送っていました。こっちに向かって転がってくる丸太を飛び越え、足元の割れ目や蛇をよけながら、伐採の様子を撮影しました。」
「長いトンネルの向こうから聞こえてくる音を想像してください。シュッシュッという音がして、ゆっくりとした空気の震えが伝わってくる。そしてリズミカルに木を切り刻んでいくのこぎりの音。350年という長い年月をかけてゆっくりと育ってきた大木を、何かを生産するためにほんの一瞬で破壊していく。そののこぎりのすすり泣くような音が、どんどんエスカレートしていく。最後には、木全体が痛々しい大きな弧を描いたと思うと、幹に亀裂が走り、ばきばきと音をたてて倒れ、ドーンという長い地響きと共に地面に叩きつけられる。重力による不可逆的なダメージ。厳かな時が訪れ、あたりは静まり返る。時が止まったかのような静寂です。引き裂かれた巨木は苔のベッドに横たわり、完全に抵抗を放棄している。カメラのレンズを通して見るという行為は、迫りくる危険を自分の目で見るのと同じではありません。」
こうしてできたイメージは、荘厳かつ詩的で大胆であり、ラリー・フィンク作品の最高峰とも言える。