THE MOTH by Jem Southam

ランドスケープ・フォトグラファーとして25年間以上のキャリアを誇り、多くの作品が美術館で所蔵されるイギリス人フォトグラファー、ジェム・ソーサム(Jem Southam)の作品集。本作は、1983年頃に撮った1枚のモノクロ写真から始まる。芸術家が集まるコーンウォール州の街セント・アイヴスにある、グウィティアン・ビーチに1人佇む男性。この瞑想的なシーンを除いては、本作に人物は登場しない。一連のカラー写真は、まるで一続きの記憶のように過去と未来の間を行き来する。30年間という長い期間に渡り、作者はコーンウォールの西を繰り返し訪れた。美しい海と鉱山業の隆盛と衰退が織りなす歴史が染みわたり、アングロサクソンから逃れてコーンウォールの海岸へとたどり着いたケルトの聖人の神話に包まれたこの土地を探索してきた。古英詩の『さすらい人(The Wanderer)』と『海ゆく人(The Seafarer)』から着想を得たイメージから成る詩的なシークエンスは、どこまでも続く緑滴る丘や小川の景色、誰からも忘れ去られたような家や餌を待っている農場の犬へと移り変わっていく。揺らめくイメージの流れをせき止めるかのように、牧歌的な風景の中に崇高な瞬間が時折現れるが、それもまた本書が描き出す漠然とした記憶にただ飲み込まれて消えていく。

by Jem Southam

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hardcover
96 pages
330 x 277 mm
color
2012

published by MACK