ニューヨークを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、ローズ・サレーヌ（Rose Salane）の作品集。「ニューヨーク州都市交通局（New York Metropolitan Transit Authority / 通称：MTA）」がオークションで出品した、ニューヨークの通勤客が精算機のシステムを騙すために使う『偽造コイン（＝スラッグ）』を作者が購入し、集めたものをまとめた一冊。作者は、個人やオークション、ネットから入手した物を使ってニューヨークの物語を紡ぐ。

「2020年2月11日、アセット・リカバリーのオークションで出品された64,000枚の『スラッグ』が入った17袋を、私が落札したとの連絡をMTAから受けた。アセット・リカバリー事業部によると、これらのスラッグは2017年から2019年の間に貯められたもので、バスの運賃を支払うために通勤客が使用した。偽造コインのコレクションを引き受けてから、反復的なパターンに基づき一握りのコインを篩い分けたときに現れた、『信仰（宗教的な記念品や祈りトークン）』、『場（行き先・記念品・入場時に必要なトークン）』、『チャンス（ゲームセンター、カジノ・トークン）』、『模倣（おもちゃのお金・偽造コイン）』、『空白（電池・座金・金物）』といった５つのカテゴリーに分類した。私は、そのコインの情報をもとに、コインを持っていた通勤客に属する歴史をランダムに書き起こしている。それぞれのコインはこの機関を通りすぎる人々が経験した時間、場所、移動の断片の連続が刻み込まれています。このアーカイブは、世界の中で最も厳しく、多様な連絡窓口の一つである場所を日々行き来し、貢献するニューヨークの通勤者に捧げる。」―ローズ・サレーヌ