オランダ人フォトグラファー、アンネマリーク・ヴァン・ドリンメレン（Annemarieke van Drimmelen）と、オランダ人アーティスト、ヤスパー・クラッベ（Jasper Krabbé）による作品集。作者らの2歳になる娘「June」のために制作された。

大半がギリシャのイドラ島にて制作された本書の作品は、まだ手付かずで、何にも縛られていない世界観を持った子供の視線を再構築するものである。

自然のままの状態を保った島の環境を写真に収めようと考えていた作者は、散歩中に娘が指摘したことにヒントを得て、新たな制作方法を見出した。ドリンメレンは動物の形を成した針金や瓦礫といった、浜辺で見つけた小さな、親密さを持ったディテールに注目したり、島の人影もない湾にある、寂れたホテルの劣化した壁に描かれた顔などを映し出した。これらの写真にクラッベがペイントを施すという手法で、別世界を思わせる二つ目のレイヤーを重ねている。ペイントと写真の思いがけない組み合わせは、時折クラッベによる詩も織り込みながら、直接コラージュされ表現されている。

作者二人の共同的な視点は、「第三者」を暗示する混成的なイメージを構成する。お互いが抱く心象を消しあい、予想外の展開を受け入れ、相互の信頼を元に二人の間を行き来することでイメージが変化していく。作者はこの作品の制作を通して、子供が持つ世界観の中に入っていくような無邪気な旅を体現している。