IN MIAMI IN THE 1980S
米国・南フロリダの消えゆく建築を蒐集し、収録した作品集。本書は、テレビシリーズ『マイアミ・バイス(Miami Vice)』の時代といわれる1980年代のマイアミを代表する、アーキテクトニカのパステルカラーの建物、海沿いの大きな住宅などの南フロリダの建築物を紹介した1冊。編集はマイアミを拠点に活動する建築家、建築史家のシャルロット・ヴォン・ムース(Charlotte Von Moos)が手がけた。本書では、亜熱帯に属する都市マイアミが芸術と建築の深い相乗効果を経験した1980年代の建築の黄金期という、失われたマイアミのヴィジョンを称えている。この時代のマイアミの建築家たちは、実用的なインターナショナル・スタイルに対抗し、遊び心と革新的な感性で、国際的な議論の一翼を担っていた。1977年に設立された実験的な建築事務所「アルキテクトニカ(Arquitectonica)」は、大胆な色彩とグラフィックスを用いた抽象的なデザインを特徴とするモダンな建築物を発表した。
残念ながら、これらの建築事務所の貢献は見過ごされがちであり、芸術的探究心という時代の精神は、粗雑な商業主義に陥ってしまったのである。2018年、「アーキテクトニカ」が開発した建物が保護建造物に指定されてからわずか2年で取り壊された「バビロン(Babylon)」の事例をきっかけに、作者が本書の研究を始めた。このような卓越したプロジェクトに対する手落ちに失望した作者は、1980年代のマイアミの建築の宝物を、完成品や未完成プロジェクトも含めて、エッセイと写真シリーズで構成した完全ガイドを作り上げた。
by Arquitectonica
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