DONALD JUDD SPACES by Donald Judd
アメリカ人アーティスト、ドナルド・ジャッド(Donald Judd)の作品集。2020年に初版を「PRESTEL」が刊行、2023年に増補第2版が「ジャッド・ファウンデーション(Judd Foundation)」より刊行された。
本書は、ニューヨークとテキサス州に建つ自身の象徴的とも言えるスペースに関して広く紹介しており、新たな図面の詳細やアーカイブ資料などを収録している。編集は「ジャッド・ファウンデーション」の共同代表を務めるフレイヴィン・ジャッド(Flavin Judd)とレイナー・ジャッド(Rainer Judd)が担当。新たに依頼し撮影された写真とアーカイブ写真、そして作者が書き下ろした5つのエッセイで構成されており、作者の作品群にとって極めて重要な役割を果たす個人的な空間を探求する機会を与える。
本書は、マンハッタンに位置する19世紀の鋳鉄製の建築「101 Spring Street」から、テキサス州西部の山中にある広大な牧場「アヤラ・デ・チナティ(Ayala de Chinati)」まで、財団が管理している現存する居住空間および制作スペースを構成する建物の内部、外装、周辺の土地について詳しく解説する。作者が1968年に自宅兼スタジオとして購入したニューヨークのスプリング・ストリートの角にある5階建ての建物を舞台に、芸術作品や家具、装飾品などを常設展示するコンセプトを生み出し、ここでは建物の歴史的な特質と自身の建築的な革新性をバランスよく融合させたことをうかがうことができる。晩年に作者が購入したテキサス州マーファに建つ建築物は、作者が「統合的な生活」というコンセプトをより大きなスケールで再現したものであると実証している。建物自体は、作者が有するテキサス州マーファラッセル軍事基地内の340エーカーの土地に建つが、同じく所有する町の南に位置する、先述した33,000エーカーの牧場「アヤラ・デ・チナティ」においてはチナティ山脈の範囲にまで及んでいることがわかる。それぞれの空間は、機能とデザインに徹底的にこだわって考えたものであり、作者が自らデザインした家具や実用的な建築物など、これらのスペースには作者の一貫した美学が反映されている。また、作者の空間は建物の保存に対する深い関心と、既存の建築の中に意図的に介入することを強調している。