ACCIDENT by Andrew Zago

アメリカ人建築家、アンドリュー・ザーゴ (Andrew Zago)の作品集。建築のように計算しつくされた構造を形にする分野では、完成された作品に表情を与えるために、素材のテクスチャー、風格、人の手で成された完璧なコントロールに対する抵抗の痕跡が持つ偶然性を利用することがある。このような場合、素材が醸し出す表情は魅力的な特性として扱われる。建築的な構造の信頼性を裏付けるものであれば、精神性の表れとしてもてはやされる。自然な素材は技術的に完成されている構造に装飾を添えることができる。しかし単にそれだけでなく、このような構造に反発して、素材が「解体」しようとする無作為な性質は、好ましいものとして幅広く受け入れられている例が無数にある。長い時間の経過による風化の影響や構造のゆがみは、正確無比な構造の堅苦しさを和らげ、魅力的で親しみやすいものに変えるとされることが多い。極端だが分かりやすい例としては、古典的な廃墟が挙げられる。この場合、技術的な構造(建物)は原型をとどめていないので、そもそもの構造と素材の崩壊が一つになって最終的な効果を生み出している。少なくともロマン主義以降廃墟(石造りのものに限る)は、美術品と同じように評価されるようになった。こうした事例に共通するのは「偶然性」である。複雑で確率論的な素材のロジックは、人間のコントロールの外で、またこれに反して、結晶化あるいは有機的な成長、そして環境の影響による複雑な分解として出現し、我々が意図していた構造を解体する。岩を幾何学的な形に整えて「石柱」と呼んでも、数世紀後かもしれないがそれはいつか必ず自然の姿に還ることになり、その時まだ柱として使われていれば建物全体を崩壊させるだろう。「偶然性とコントロールの相互作用」は、このような分かりやすい状況とそれに伴う感情を遥かに超えて広がっている。このようなもの全てが「アクシデント」であり、またアクシデントであるが故に、あらゆる技術的な構造に(潜在的に)内包されている相互作用の中でも、時の流れによって美化されたほんの一部のみを指すのである。

by Andrew Zago

REGULAR PRICE ¥5,940  (tax incl.)

softcover
528 pages
140 x 195 mm
color, black and white
limited edition of 500 copies
2018

published by ART PAPER EDITIONS