DAS PUKE BOOK by Martin Wong

アメリカ人アーティスト、マーティン・ウォング(Martin Wong)の作品集。本書は、1977年に作者により自費出版されたチャップ・ブック(※註)を再現したものである。本書は1970年代初頭に執筆され、サンフランシスコやその先に広がる数々の恥ずかし気な物語が詰まった13章の手書きのショートショートを収録している。
 
Da Otto Biography of Otto Peach Fuzz」という副題がつけられた本書には、個性的な人物たちが登場する。その中には、サンフランシスコの伝説的な演劇劇団「ザ・コケッツ(Cockettes)」や「エンジェルズ・オブ・ライト(Angels of Light)」のジョージ・"ハイビスカス"・ハリス(George “Hibiscus” Harris)、「エンジェルズ・オブ・ライト」のロドニー・プライス(Rodney Price)とデブラ・"ビーバー"・バウアー(Debra “Beaver” Bauer)といった無名のアングラの人物もいれば、ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)、神様といった著名な人物もいる。淡々としながらも、忘れられないほど鮮やかなシーンを描いており、その中にはゴッホがゴーギャンをかみそりで襲う場面や、ビーバーがホットドッグを食べすぎて爆発する場面、そしてサンフランシスコに来た神が吐き気がするようなメモ帳を見つけ、世界が終わるまで延々と嘔吐し続けたりする場面を描いている。これらの物語は、「エンジェルズ・オブ・ライト・フリー・シアター」のフライヤーや舞台背景の制作に従事していた作者が、ニューヨークへの移住の直前に刊行された。これらの物語は、作者の遊び心と当時の不条理で多様で変化に富んだ環境を捉えている。
 
これらの物語の多くは、本書が出版される前に、作者の今や象徴となったカリグラフィーの巻物に掲載されていた。言語とその表現に生涯魅了され続けた作者は、60年代に揺らめくようなカリグラフィーのスタイルで書き始め、サイケデリック・ムーブメントに自然に溶け込んだ。本書が書かれた時期、作者はネパール、インド、アフガニスタン(第12章に登場)を旅し、ヘラートでモザイクのワークショップを受け、書道とタントラ絵画を学んだ。帰国後、1973年には本書を書き終え、同年中に「エンジェルズ・オブ・ライト」との活動をに終止符を打つまで、作者は自らをタントラのセット・デザイナーと呼んでいた。

※註 自作、出版、配布される詩や短編小説のコレクション

by Martin Wong

REGULAR PRICE ¥1,980  (tax incl.)

softcover
16 pages
71 x 114 mm
black and white
2024

published by PRIMARY INFORMATION