スイス人アーティスト、ステファニー・ベヒラー（Stéphanie Baechler）の作品集。

東スイスの絵画のように美しい風景には、「Hänggiturme」や「Tröckneturme」と呼ばれる、かつて染色した織物を乾かすために用いていた独特かつ記念碑的な木造の塔があり、その数は減少の途を辿っている。この地域が繊維産業の世界的な中心地として活況を呈していた19世紀の名残である。自身もザンクト・ガレンのテキスタイルデザイナーであった作者は、この塔の歴史とそこに納められていた作品を掘り起こし、芸術的に関わることで、今、塔を再び活性化させることを決意した。建築写真家であるラディナ・ビショフ（Ladina Bischof）が撮影した、残された塔の写真群をアトラスの形でカタログ化し、画像、記録資料、メモ、一口話、書簡、テキストで構成している。本書は、職人技の非階層的な探求であり、失われかけた歴史を掘り起こす試みであり、何よりも、ますます非物質化する世界における物質への頌歌である。

本作は、2024年8月から9月にかけて、スイスの「Kunst Halle Sankt Gallen」で展覧された。