ドイツを拠点に活動するイラン人アーティスト、ナイリー・バグラミアン（Nairy Baghramian）の作品集。米国テキサス州ダラス芸術地区にある美術館「ナッシャー彫刻センター（Nasher Sculpture Center）」で2022年10月から2023年1月まで開催された展覧会に伴い刊行された。

本書では、トラウマの場として「かりそめの身体」というものを探究した作者の新作を紹介する。タイトルは、フランス語で美術の授業における生身のモデルの意である「modèle vivant」から由来し、その伝統からインスピレーションを得ている。

ルイーズ・ブルジョワ（Louise Bourgeois）、アンリ・マティス（Henri Matisse）、パブロ・ピカソ（Pablo Picasso）など、「ナッシャー彫刻センター」の永久収蔵となった彫刻作品との対話を通して、身体を用いた表現や、目に見えないモデルたちの労働について考察し、新たな表現を提示する。あわせて、「modulate（調整する）」や「modify（修正する）」のような「model」の類語にあたる言葉の持つ異なった意味がもたらす言語的な戯れも見せる。