UNICORN by Bela Borsodi
オーストリア人フォトグラファー、ベラ・ボルソディの作品集。本作は、一見すると抽象的に作られただけの静物写真のシリーズ集だが、より注視すると何らかの言葉や単語を表現するための手段としてイメージが用いられている。写真の中にその意味をほのめかす仕掛けが隠されており、本作がきちんと秩序立てて描かれた判じ物(※註)パズルであることをイメージそれ自身が教えてくれる。文脈を無視して見るとどのイメージも画像やアイテムが無作為に組み合わさっただけのようであるが、観察するうちに様々な手がかりを経て、ゆっくりと解読パターンが図像全体に見え出してくる。そこには被写体が綿密な計算の上に配置され、一緒に写っている文字の追加もしくは削除が示唆されている。その意味を解読すべく、我々は写っているものを部位ごとに分け、通常写真を見る時とは異なる手順でイメージを見始める。その謎が解ける頃には新しい写真の領域を楽しんでしまっているだろう。ここで重要なことは、カメラで被写体を撮ってイメージを完成させているという点である。コラージュのように見えるかもしれないが、完全に秩序立てて並べられて構図が作られている。一見フラットに写り合成されたように描かれているヒントの文字は、実は立体的なハンドクラフト作品のように作られて他の被写体と一緒に並んでいる。こういった要素を通して出来上がったイメージは二つの役割を果たす。一つは視覚芸術として必須である「美的に圧倒する」ということ、そしてもう一つは「テーマにまつわる仕掛け」としての機能するということである。
「この作品は、極端な柔軟性のなさと制約によって容赦無くルールに縛られている。『解く』ことが機能したパズルと、魅力的かつ一貫した何らかの意味やメッセージを持つ写真、その両方を作ることが私の取り組みだったんだ。」
それぞれの図像が表す言葉が作者自身と強く結びついていることは重要なポイントであり、ある意味作者の価値観や個性をサブリミナル的に見ることができると言える一作である。
※註 文字や図画に意味を隠し、それを当てさせるようにしたなぞ解き。