ベルリンを拠点として活動するイギリス人アーティスト、タシタ・ディーン（Tacita Dean）、ニューヨークを拠点に活動するフランス人フォトグラファー、ブリジット・ラコンブ（Brigitte Lacombe）、アメリカ人フォトグラファー、キャサリン・オーピエ（Catherine Opie）による作品集。アメリカ人キュレーターであるヘレン・モールスワース（Helen Molesworth）による編集。現代を代表するポートレイト作家陣3名によって作られた、「アーティストのポートレート」選集である。ディーン、ラコンブ、オーピエ三者の手による多様であり特徴的な作品群をまとめ、人物描写とそれぞれのアプローチという議論百出の分野を掘り下げ、その親密性と公共性の間にある拮抗を探る。

この三者には歴史的尺度からすれば数多くの共通点があるが、カメラの使い方はそれぞれに異なる。ディーンはカメラが撮りうる時間の限界を探り、ラコンブは依頼仕事もこなし、オーピエはスタジオ撮影の伝統にのっとって活動する。同じ被写体が撮られたことも多く、作者らの出会っってきた独創的な思想家やクリエイターの、刺激的かつ親密で、深く響くポートレイトを仔細に見ることのできる一冊である。被写体の分野は音楽、絵画、写真、映画、文学にまで多岐にわたり、ヒルトン・アルス（Hilton Als）、マヤ・アンジェロウ（Maya Angelou）、リチャード・アヴェドン（Richard Avedon）、ジョーン・ディディオン（Joan Didion）、デイヴィッド・ホックニー（David Hockney）、ジョーン・ジョナス（Joan Jonas）、フラン・レボウィッツ（Fran Lebowitz）、パティ・スミス（Patti Smith）、カラ・ウォーカー（Kara Walker）なども含まれる。

本書はニューヨークの「国際写真センター（International Center of Photography）」で開催された展覧会に伴い刊行された。展示のキュレーターを務めたモールスワース、アーティストで作家のジャレット・アーニスト（Jarrett Earnest）によるエッセイも収録。