NOTES ON DEVILS by Jacob Dwyer
イギリス人アーティスト、ジェイコブ・ドワイヤー(Jacob Dwyer)の作品集。本作は、作者によるオーディオドラマ作品『The Devil Museum』(2021年)を書籍にしたものであり、時間というものの恩恵を受けながら、再読・再考し注釈を加えて仕上げている。作品の音声を流すと、リトアニアにある「悪魔博物館(Devil Museum)」にある3,000体の悪魔の彫刻を全て撮影する命を受けた男性(作者である)のオーディオ・ダイアリーを耳にすることとなる。しかしプロジェクトは失敗し始め、主人公の男性が木造の小屋にて一人きりで過ごす時間が重なっていき、やがて物語は退屈、男らしさ、孤独といったテーマに少しずつ移っていく。作者は撮影プロジェクトのために、「モンドリアン基金(Mondriaan Fund)」から8,000ユーロの支援を受けていたが、その全てを友人のマーティンという人物に貸してしまい、返す約束を常にされながらも返済されず、一向に作業を開始することができないのである。本書は、マーティンなる人物が、大人になってから不器用であると気づいた実在の友人・知人たち、それも皆男性の融合体であると読み取ることができる。注釈を用いて作者はそこからの影響を緻密に描き、そこでさらに新しいシーンを想像するのである。また、あわせて現実の人間関係や、その中で繰り広げられる男らしさの形というものも改めて想像することができる。
本書には、2018年初頭にリトアニアで制作された、オリジナルかつ未編集のフィールドレコーディングのオンラインアーカイブが添えられている。本作の刊行にあたり、作者はラジオドラマやテキストによる考察、未編集のフィールドレコーディングの1セクションの間を行き来する形をとった、パフォーマンス的なリーディングとして作品を発展させている。