モントリオールの建築ミュージアム、「CCA（Canadian Centre for Architecture、カナダ建築センターとも）」による「CCA Singles」シリーズ第2弾。アメリカを拠点に活動する人類学者でありキュレーター、研究者のロバート・J・ケット（Robert J. Kett）が手がける。CCAが主催するキュレーションプロジェクトの範囲や境界の検討・拡大を目指す「CCA Emerging Curator」プログラムに参加した作者が、1969年から1971年におきた「ザ・ロック（the Rock）」ことアルカトラズ島の占拠事件を再考し、北アメリカ先住民の権利回復運動およびそのスローガンである「レッドパワー運動」に出会ったカウンターカルチャーを支持する白人たちが思い描いた「ザ・ロック」のもう一つの姿に光を当てた。

作者は、アメリカのカウンターカルチャーを担っていた人々によるデザインの仕事において、ニューメディアの実践と先住民の文化の影響が重なり合った瞬間を研究することの必要性を指摘した。また、この瞬間を振り返ることによって、現代における文化の流用（アプロプリエーション）とデザインの方法論についての議論を新しい視点から理解できると主張している。

さらにこのプロジェクトは、CCAにこうした問いを探求する機会を提供することによって、先住民の声の存在を認めるという視点から見るとCCAのコレクションやプログラムには重大な欠落があることも明らかにした。

「CCA Singles」は、1つの意見、1つのもの、あるいは1つの出来事を紹介する少部数・限定版の出版物シリーズ。生の資料から1つのテーマに関する考察を編集したものまで、CCAで発案・収集されたアイデアをじっくりと吟味することができる。