BECAUSE by Sophie Calle [ENGLISH / REVISED / EXPANDED EDITION]
フランス人コンセプチュアル・アーティスト、ソフィ・カル(Sophie Calle)の作品集。2018年に刊行され、瞬く間に絶版となった『BECAUSE』が、6つの新しいストーリーと7つの新たな写真を加えて、増補版として再販された。
1985年7月、アーティストであるエルヴェ・ギベール(Hervé Guibert)、ジャック・モノリ(Jacques Monory)、デニス・ロシュ(Denis Roche)、ソフィ・カルは、アルルの「テアトル・アンティック(Théâtre Antique)」で開催された夕べで、自身の写真を投影しし、作家自身で紹介するために招かれた。プログラムの最後を飾ったデニス・ロシュは、極めて特別な方法で彼の写真を紹介した。「暗闇の中、彼は写真を撮る動きをする前に、それぞれのショットを作った状況を語り、その後、シャッターを切るのにかかった時間だけ画像を見せた。」
このシャッターから『BECAUSE』のアイデアは生まれた。ドゥニ・ロッシュのように、作者はカメラのシャッターを押すに至った理由を語ることにしている。「それを追いたいという欲求のために」、水面下に沈む道路の区画線を撮影した写真『The White Line』(2018年)を正当化し、「これ以上は何もないのだから」、墓地の反対側にあるプリュリアンの町の出口標識を撮影した『Leaving Plurien』(2018年)に関連づける。本書では、作者が語るストーリーを2段階で発見することができる。テキストが先に現れ、ページをめくると綴じられた紙の隙間に隠れた写真が、読者の前に姿を現す。
本作は、シャッターを切る前の物語であり、アイデアが浮かんだときの頭の中の物語でもある。本を開き、『BECAUSE(なぜなら)』から始まるのである。作者は理由を、少なくともひとつの理由を、我々に語る任務を負う。それは、シャッターを押すに至った理由である。写真はページの隙間から現れて初めて明らかになる。こうして、イメージとそれに添えられた言葉の間に生じてきた自然な優先関係を逆転させ、言葉が我々の写真の受け取り方に及ぼす影響に注意を呼びかけるのである。
本書は、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスの美術館「ウォーカー・アート・センター(Walker Art Center)」で2024年10月から2025年1月まで、カリフォルニア州コスタメサの「オレンジカウンティ美術館(Orange County Museum of Art)」で2025年3月から6月まで開催される展覧会「Sophie Calle: Overshare」に伴い再版された。