アメリカ人彫刻家、フレッド・サンドバック（Fred Sandback）の作品集。そのキャリアをスタートさせた当初より、作者は彫刻的な量感を考える際に、ドローイングを用いて形にしてきた。既存の部屋を描いたイメージ上に、色鉛筆でドローイングをし、作者の作品でよく知られる水平、垂直、斜めの線を描くことで、空間と平面の可能性を探った。1980年代には、ドローイングのレパートリーをアクリル、ポショワール技法、パステルへと広げていった。このような後になってからのドローイングでは、作者が鉛筆を用いて描いたスケッチよりも絵画的であると考えられているが、空間、質量、体積に関する経験をもとに、一貫性のある空間では表現不可能な方法で巧みに表現している。このような彫刻的アイデアの多くは、制限を取り払ったものであろう。

作者はドローイングの中で、空間全体のうち特定の部分のみを仄めかすように描くべく、少々変わった技法を考え出した。例えば、線を描く代わりに実際に切り込みを入れたり、透明なフィルムに絵画的な痕跡をつけるといったものである。本書は、30年にわたって制作されてきた作者のドローイング作品を蒐集しており、加えて彫刻作品も掲載している。