CHURCHES by David Spero
イギリス人フォトグラファー、デイヴィッド・スペロ(David Spero)の作品集。イギリスの工業団地、ショッピングモール、家屋、ガレージ、映画館、パブといった場所を使って作られた教会をタイポロジカルに写したシリーズ。本書に掲載されている教会は、「カリスマ系福音主義運動」なるものを形づくった、広範かつ多岐に渡る宗派や教派のあり方を写し出している。物質的、建築的視点で見ても、写された建物はプロテスタント的な禁欲を表しており、宗教色のない物質的合理主義や消費主義に対抗し起こしたスピリチュアリスト教会(※註)の活動に強く沿っている。このような状態の教会においても、キリスト教でいう精霊の存在や信仰心がそこには満ちており、神を自身で感じることができる。何か堂々とした荘厳な建築物でもなければ、歴史上支配的である宗派の地位や権力を象徴しているわけでもない。たまたまその建物に教会が在るだけで、教会として存在するために設計されていない。世に数多とある信仰心の証の一つとして現れた形であり、それを無作為に撮り集めた結果本作が出来上がった。一時的、もしくは半永久的に教会として使っていたり、はたまた神聖なものとして永久的に場所を捧げた場合もあるが、誰のものなのかはっきりとは明かされていない。入り組んだ政治的討論の議題や紛争の的となってしまっている宗教問題を孕む移民政策やグローバル化が広がるこの時代において、いかに宗教的信仰がコミュニティー意識を生み都市生活の変容を支えているかということは忘れられがちである。本作は、神は最もいそうもない場所に存在し、人は神の恩恵を受けている状態を恒久的に必要としていることを証明するのかもしれない。
※註 英国スピリチュアリスト同盟(SNU)が運営し、イギリス全土に300箇所以上存在する教会。あらゆる宗教や教義や信念に属さず、スピリチュアル(交霊会)を体験し学ぶことを勧める。イギリスのほかアメリカ、オーストラリアにも同じような団体がある。