PAINTINGS FOR THE FUTURE by Hilma af Klint
スウェーデン人画家、ヒルマ・アフ・クリント(Hilma af Klint)の作品集。2018年10月から2019年4月まで「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum)」で開催された展覧会に伴い刊行された。
作者は、1944年に81歳で年齢でこの世を去った時、その生涯でほとんど公開することのなかった1,000点以上ものペインティングや紙に描いた作品を後に遺した。世間はまだその芸術を受け入れる準備ができていないと考え、20年は隠しておくようにと作者が求めたことを受けてのことであった。その前衛的な抽象画群と対面できる機会を大衆が得たのは、ここ十年ほどのことである。ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky)や他の現代の抽象主義の草分けとされているアーティスト達の作品の先をいく、大胆なほどにカラフルな作品の多くが大判のものであり、全体化した目に見えない世界秩序を、自然的あるいは幾何学的な形、文字の要素、深遠なシンボリズムを合わせた図で表現しようとする野心的かつ精神的に洗練された試みを反映するものである。
アメリカにおける初の大規模かつ包括的な展覧会にあわせて刊行された本書は、作者の画期的な絵画シリーズを紹介すると共に、その人生と芸術の全貌を明らかにする最新の学識についても述べる。エッセイでは、スウェーデンのモダニズムと民芸の伝統、現代の科学的発見、スピリチュアルやオカルト的運動という視点から作者を考察し、フィギュレーション(具象)と決別しそれに続く発展へと踏み出した1906年の社会的ないし知的、芸術的日系を探る。現代アーティストや学者、キュレーターを交えた討論では21世紀における作者の芸術の原動力と関連性を論じている。思いがけずも本展覧会が開催されたのは、「グッゲンハイム美術館」の丸天井の広間であるが、らせん状の殿堂に作品を展示したいという作者の叶わなかった願いについても深く研究している。
同美術館のシニア・キュレーターであるトレイシー・バシュコフ(Tracey Bashkoff)のテキスト、美術史・文化史家であるテッセル・M・ボードウィン(Tessel M. Bauduin)、キュレーターであり評論家のダニエル・ビルンバウム(Daniel Birnbaum)、美術史家、評論家、キュレーターのブリオニー・フェール(Briony Fer)、作家のヴィヴィアン・グリーン(Vivien Greene)、同美術館のアシスタント・キュレーターデヴィッド・マックス・ホロヴィッツ(David Max Horowitz)、美術史で教鞭を執るアンドレア・コルニッツ(Andrea Kollnitz)、現代美術キュレーターのヘレン・モールスワース(Helen Molesworth)、美術史家のユリア・フォス(Julia Voss)による寄稿を収録。