日本人前衛彫刻家、画家、小説家である草間彌生の作品集。作者の創作物の中でもっとも著名であり、壮大であり、作者を象徴する作品の一つである『Infinity Mirrored Room（無限の鏡の間）』シリーズを中心に作品を紹介し、50年以上にわたり現代美術の潮流に影響を与え続けてきたその軌跡を描く、初であり唯一の包括的な出版物である。2017年に本書の初版が刊行。本作は2023年刊行版である。

版元であるワシントンD.C.の「ハーシュホーン博物館と彫刻の庭（HIRSHHORN MUSEUM AND SCULPTURE GARDEN）」は、『Infinity Mirrored Room&mdashMy Heart Is Dancing into the Universe（無限の鏡の間&mdash私の心は宇宙へと踊り出す）』（2018年）を購入し、2022年に公開している。

作者が制作した部屋は、無限に続く無数のカラーライトで満たされている。「のぞきからくり」のような一室やマルチメディア・インスタレーションなど、作者の万華鏡的な空間はどれも無限空間に一歩踏み入れてしまったような幻想を体験する機会が与えられる。この決定版的な一冊は、一連のインスタレーションを辿り、ベトナム戦争時期の「自己消滅（self-obliteration）」から現在のより調和的な野心まで、長い年月をかけ、作品がいかに様々な様式を象徴するようになったかを明らかにする。不安を想起させるような初期のインスタレーションを最近の作品の雰囲気とともに紐解くことで、現代における新しく実験的な創作に対する関心の中に見られる先進的な表現を歴史化している。豊富な作品群に彩られた本書は、『Infinity Mirrored Room』シリーズが作者のキャリアに及ぼした影響を我々に見せてくれる。