デンマーク人建築家、デザイナーであるアルネ・ヤコブセン（Arne Jacobsen）の作品集。20世紀において最も影響力を持った建築家、デザイナーのひとりである作者の世界を探る一冊。

デンマーク内のみならず国外でも名を馳せた人物であり、そのアイコニックな数々の椅子は不朽の名作として知られているが、同時に熱心な写真家、画家でもあり、芸術の分野から建築を発展させるべく、インスピレーションや新たな手法をそこから見出した。本書は作者に関する最も包括的なモノグラフとして、その人生と作品の未だ知られざる側面を探求した一冊である。

戦後ヨーロッパのアヴァンギャルドなアートシーンの最中において、仕事と個人的な生活の両面で、芸術からどのように影響を受けてきたかを明かす。また、本書では生涯における作者のクリエイションの解釈に新たな光を当て、モダニストとして伝統を破壊したというこれまでの認識に異議を唱え、既存の美学を変えるために素材と繊細に向き合い、創造性溢れる革新を起こした者として位置づけている。あわせて、デンマークと北欧における幸せの美学を定義づけるにあたり、作者が成した大きな役割も掘り下げている。椅子やテキスタイルデザイン、水彩画、照明、建築モデルなど、よく知られたものから無名の作品まで、あわせて作者が手がけた数多くのデザインのうち未公開かつプライベートな写真を数百点も収録し、美しい装丁でまとめられている作品集である。