FOUNDATIONS by Víctor Santamarina
オランダ人アーティスト、ヴィクター・サンタマリーナ(Víctor Santamarina)の作品集。ロッテルダムのブリエーネンオールト島の湿地帯に設置したインスタレーションの記録である。この作品のために、液体の滴りや流れをアルミニウムで鋳造し、その作品で構成される2つの彫刻が湿地の潮間帯に設置された。潮の満ち引きとともに見え隠れする彫刻たちは、月、水、人間、人間以外のものが休むことなく互いに作用してはまたそれをもとに戻すという、この特殊な環境で起こる循環的な変容の一端を担っている。
双眼鏡で撮影された一連の写真を通じて2つの彫刻とその周囲を観察することによって、鑑賞者もまた、著者が「マイナスの島、盛り上がりというよりも空洞、世界に穿たれた丸い穴、下水道」と表現する場に能動的な登場人物として配置される。本書には、映像作家のフェリックス・カルメンソン(Felix Kalmenson)による寄稿文『Emergence/y』が収録されている。
「私たちが足を踏み入れようとしている島はマイナスの島だ。盛り上がりというよりも空洞、世界に穿たれた丸い穴、下水道なのだ。詰まった汚い下水道、都市が排出する不要な残骸が全て集まってくる場所。それは、野生の雑草や壊れたパイプ、笑気ガスで脳を麻痺させたティーンエイジャー、詩人、アオサギ、はみ出しものの漁師、焚き火、廃品回収業者。ストルガツキー兄弟が描いた“ゾーン”に散乱する破片だ。そして私たち。私たちをここに連れてきたのは、喉の奥から出てくる引力に他ならないのだろうか。私たちは後退する舌に引きずられるまま口の中に連れ戻され、穴へと向かう。そして穴の中で私たちは永遠にさまよい続ける。太ももの高さまであるウェーダーを履いて底に下り、少しでも安全に感じられるようにゆっくり歩く。それでもあなたは私の後ろに回り、私が歩いた跡を見下ろし、見つめている - 倍率10倍の双眼鏡で。前回、私はあるものを持ってきた。それは、やがて溶かされ、下水の景色の一部になろうとしている私たちの世界の削り屑だった。でも、それも今はもうない、あるいは見つからない。もしかすると、本当に島になったのかもしれない。それ以外に島になるものなどあるだろうか?それは私たちの運命でもあるのだろうか?私たちはお互いを置き去りにしないと約束した。泥の迷路の中には水が豊富に存在し、それに長い間見入るのは危険だと私たちは知っている。潮が満ち、潮が引き、潮の流れが私たちを虜にする。水たまりは1日に100回満たされては空になる。私たちはどれに沈むのだろう?私の耳に絡みつく、糸のような巻きづるがささやく。『それはあなたが決めることではない』と。」–ヴィクター・サンタマリーナ