NOTES FROM THE WOODSHED by Jack Whitten
アメリカ人アーティスト、ジャック・ウィッテン(Jack Whitten)の作品集。絵画に対する実験的なアプローチで名高い作者は、自らの制作行為と作品を研究・理解し、それらに向き合うための手段としてしばしばペンを執ってきた。作者の文章に捧げられた最初の作品集である本書は、多くの文章の表題として使った「NOTES FROM THE WOODSHED」をタイトルに冠している。キュレーターで作家のレガシー・ラッセル(Legacy Russell)は、2021年に行った文化理論家、詩人、学者のフレッド・モーテン(Fred Moten)との対談で、この「woodshed」(薪小屋)はジャズの世界から来た言葉だと説明した。「薪小屋に行く」というフレーズは「一人で練習する」という意味である。さらに、プライベート空間では様々な実験ができると同時に本当に厳密な仕事ができる、つまり特定の視線にさらされずに研鑽を積み、公に発表する前に過激な表現を吟味できるということも示唆されている。詳細な日々の記録から、練り上げられた長いエッセイ、出版された声明、公の場でのトークまで、様々なタイプの文章は、作者の50年のキャリアを振り返り、アクションペインティングとプロセスアートのリズムの橋渡しをした作品にコンセプチュアルな深みを与えている。これらの文章を一堂に会した本書は、機械的な自動化と強烈に個人的な表現の間を揺れ動き、独自のニュアンスを持つ絵画の言語を浮き彫りにしている。
「これらのメモを見ると、ウィッテンが私たちのために指数関数的・次元分裂的・根茎的な驚くべきやり方で自分の進む方向性を指し示していることがよくわかります。黒人であるということと、そのために課された制約に対する彼自身の、あるいはこの世界の定義を通じて、またそれらを超越して、美術史におけるある種の“偉大さ”に彼は向かい、こうした定義を全て打ち壊してしまうことでしょう」
&mdashジャック・ウィッテンをテーマにしたフレッド・モーテンとの対談(2021年1月)でのレガシー・ラッセルの言葉