FLOWER SMUGGLER by Diana Tamane
ラトビア生まれ、エストニアを拠点に活動するアーティスト、ダイアナ・タマン(Diana Tamane)の作品集。
「良いアートを作るものは何なのかを簡潔に考えてみると、それはもちろん私たちの目の前にあるものに働きかけて作品を作ることである。発明するのも良いが、未知の世界へと飛び出すポイントが既知のものであるならばなお良い。確かに自分の家族ほど簡単に利用できるモチーフはないが、それは我々が決して逃れることのない土台でもあり、もしそこから逃れようものならば必然的にその基盤から逃避したことになる。ダイアナは自分の家族が生み出した画像素材を形式的かつ技術的に何層にも分け、『誰がどのように誰をみているのか?』という大きな問いや、『カメラの電源を切っている時人はどうしているのか?』『どこまで皮膚というものは我々の最後の境界線となるのか?』『人は死んだらどうなるのか?』という小さな問いを視覚的に明確なものにする。作者はありとあらゆる家族の表現を引き出し、鋭い目で完全に独自の世界観へと変貌させていく。携帯のカメラから、父の過去10年分データが入ったメモリースティック、トラック運転手である母のドライブレコード、Eメールに至るまで、ダイアナは現代の写真/映像のインフラとなっているもの全てのレパートリーを用いる。そしてそれは、人が想像し得る東洋にまつわるあらゆる定型的な表現を満たしつつその定型を覆すためでもある。我々は、彼女のアプローチの裏側に眠っている芸術史的知識を忘れてはならない。そのアプローチは、幸運にも非常に自由であり、学術的な方法ではなく、何にも囚われていないようである。昨今、多くの芸術においてそうであるように、ダイアナの作品の位置付けを確認するための単純な機能しかもたない一文脈は必要ないだろう。最終的に彼女は、まるで過去30年の間に起きたヨーロッパの変革に匹敵するくらい大きなできごとを解説するような「公共的な何か」を伝えるために、家族のような「私的なもの」を用いているのである。」-マーティン・ジャーマン(キュレーター)
20 Photobooks Around Gender ミヤギフトシ「写真を通した現代美術家のまなざし」【IMA Vol.36特集】