A CIVIL RIGHTS JOURNEY by Doris Derby
アフリカ系アメリカ人フォトグラファー、アクティビスト、人類学教授であるドリス・ダービー(Doris Derby)の作品集。20世紀半ばにアメリカ南部、特にミシシッピ州で盛んだったアフリカ系アメリカ人公民権運動(Civil Rights Movements)を通じて、作者は写真家、組織の長、教師として活動し続け、生き残りと人権をかけた日々の戦いの中で、親密で人間味あふれる側面を写真に捉えた。政治的なイベント、会合、葬式などに加え、協同組合の設立、読み書きやコミュニティによる劇などのプログラムの開催に至る過程を撮影し、その中で多くの危険や悲劇を体験した。また、作者はこうした団体やプログラムを多数設立している。
この運動の決定的瞬間となったスピーチやデモ行進の様子に加え、モハメド・アリ(Muhammad Ali)、アリス・ウォーカー(Alice Walker)、ファニー・ルー・ハマー(Fannie Lou Hamer)、ジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson)などの重要人物の姿を見ることができる。また、教室や教会のホール、医師や秘書、喜びや挫折、好奇心、人と人とのつながりといった日常の中の一場面も写し出されている。そしてこうしたイメージの中に、この運動に参加した人たちの決意や行動が等しく表現されている。
本書は、作者のイメージをシークエンスとして提示することによって、地方と都市の貧困を記録し、特定の通りや家族の民族誌を分かりやすく表現し、ミシシッピ・デルタ地帯で育つアフリカ系アメリカ人の子どもたちの日常生活を追跡し、ジャクソン州立大学銃撃事件、キング牧師の葬儀、1968年の民主党大会といった重要な出来事を立証している。
作者の写真は、今日の世界を定義することになった歴史的瞬間のポートレイトとしてかけがえのない価値を持つだけでなく、なすべきことが未だになされていないことを思い出させる。これらの写真に収められた出来事についてダービー自身が記した詳しいテキストも合わせて収録されている。
「ダービーの親密さに満ちた素晴らしい写真の背後にある物語は、そこには写っていない彼女の類まれな人生と密接に絡みあっている… 自らの体験を撮ったスナップショットには、1960~70年代にアメリカ社会で巻き起こった大変動がまざまざと写し出されている」– The Guardian
「ポジティブなエネルギーと活動を撮ったこの時期のダービーの写真の多くは、溢れるばかりの喜びを感じさせる。一方で日常の場面を捉えた写真は、アフリカ系アメリカ人公民権運動のデモや、当時の黒人コミュニティが日々晒されていた暴力とはかけ離れている」– Apollo
「些細で個人的な瞬間を写し出したダービーの写真は、当然の権利であるよりよい暮らしを求めた人のために巻き起こった重要な変化のうねりの重みを伝えている」– Storied