NEW PAINTINGS 2 by Eddie Martinez
ブルックリンを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、エディ・マルティネズ(Eddie Martinez)の作品集。ストックホルムの「Loyal Gallery」で開催された展覧会に伴い刊行された。その作品11点をつぶさに見ることができる一冊。
展覧会のテキストより抜粋:
マルティネズの表現は、文字通りの意味ではない何かを示唆している。彼の作品は、特異な視点や考え方を絵具で記録したものではない。それは現在進行形で絵の具を使って記録されている。人生とその中で経験する波乱や野心が自ら何かを語りだすまで、マルティネズは巧みな筆さばきで軽やかに色や線を重ねていく。簡単に歌えるけれど演奏するのは難しい曲のように、彼の作品は完璧に作り込まれているが、その真意を読み解くことは容易ではない。それは体験の描写というよりも、体験を蒸留して取り出した純粋な何かのようである。マルティネズは抽象表現の力を維持しつつ、かたちに手を伸ばしている。
ペンが紙に触れる瞬間に目に見えない地図が誕生し、展開していくように見えるが、表面下にはマルティネズ独自の構造化のシステム、あるいは打楽器が奏でる音のシステムが隠されているので、この時点ではその地図を目で見ることはできない。重低音のベースと円熟したサウンド。柔らかいバリトンの声は大きな筆で描かれた線のようだ。繊細で優しい色が薄く広がる。楽曲の上を漂うフルートの音色のような、細く曲がりくねった線。高音のトランペットは黄色いバナナ、赤い斑点のあるきのこの優しいハーモニー。視覚と音の世界においては全ての感情が等しい価値を持つように、全ての色、音、かたちは自然な感情を持っている。
マルティネズが制作において重視してきた連続性にもこれと同じリズムが流れている。可能性は無限大であることを知っている彼は、繰り返し同じ絵に立ち帰り、既に整理し終わっているかたちを分類する新たな方法を探す。マルティネズの絵は、関連性を持つ一方で、異なる時に異なる方法で現れるかたちを集めたコレクションである。