MONSTERS IN SUITS by Nicolas Frey

チューリッヒを拠点に活動するスイス人アーティスト、ニコラ・フレイ(Nicolas Frey)の作品集。本書は、公式な胸像まがいの格好をしたスーツ姿のモンスターたちが皮肉的に並べられた、ホラー・キャビネットを見せているような一冊である。政財界の大物たちが濃紺のボールペンで風刺的に描かれている。

大きく見開き充血した眼が険しい表情で見つめ、並んだ触手が裂けた口を隠しながら欲深く震える。ある者の頭を覆う幕は薄く、その下の脳みそが飛び出しているように見え、またある者は爬虫類のような顔、犬の頭、くちばし、象の耳や尖った耳、触角、歯などが頭のてっぺんから突き出ている。どこを見ても、イボや剛毛、病的に増えた毛束、一つ目の巨人の眼、垂れ下がった耳、歯抜けで不気味に笑う顔、複数の瞳孔を持つとてつもなく大きい眼などが飛び込んでくる。そしてその合間合間には、髑髏の描かれた袖やカフスボタンやシャツのボタンが、まるでホラーの通販カタログのように載せられている。

本作は、例えば<ネスレ(Nestlé)>の元CEO(「水は権利でなく商品(Water is not a human right)」発言で有名な)やアメリカの秘密結社・白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(Ku Klux Klan)」の幹部、極右の青年団体の首謀者といった特定の人物たちの肖像画を単純に描くのではない。潜在意識によってグロテスクなモンスターやブギーマンの如く歪んだ姿に変えられ、混ざり合い、にも関わらずそれぞれが立派な装い、つまりスーツやタイなどを身に纏っている。描かれたモンスターたちは、世界の幸福を犠牲にしてでも、ビジネスの準備は万端であり、そんな本当の姿を本書で見せてくれているのである。

by Nicolas Frey

REGULAR PRICE ¥7,920  (tax incl.)

haedcover
180 pages
170 x 264 mm
color
2021

published by EDITION PATRICK FREY