PATHÉ'O by Pathé'O
ブルキナファソ出身のファッションデザイナー、パテオ(Pathé'O)の作品集。作者は、ありとあらゆる意味で、アフリカのファッションアイコンである。そのコレクションは、拠点としているコートジボワールの国境をはるかに越えて知られており、成し遂げてきた独創的な偉業は、30年以上にわたってアフリカ大陸のファッションにおける美的価値観のスタンダードや体験に影響を及ぼした。結果として、最近ではファッションブランド「ディオール(DIOR)」とのコラボレーションを遂げるに至っている。作者の独特なデザイン美学と最先端をゆくサステナビリティへのアプローチ、そして、文化への献身と事業家的なクリエイティビティを組み合わせる才は、あらゆる世代のデザイナーたちにインスピレーションを与えてきた。長きにわたり、西アフリカの旧フランス植民地の政治家やショービジネスの有名人は、西欧風に装うことが当たり前だった。そのような状況下で作者は、ローカルなファッションスタイルや産業の価値をアフリカ人たちに知らせるというはっきりとした意思を持って、仕事に臨んだのだ。
1980年代に作者は、オートボルタ(現ブルキナファソ)の大統領であり、汎アフリカ主義を提議したトーマス・サンカラ(Thomas Sankara)と親しくなった。土地の誇りや文化遺産を振興させたサンカラの決断力に深く感化された作者は、その時からローカルに製造された生地のみを用いるようになった。作者の作品は、文化遺産や歴史、アイデンティティへと、現代の敬意を示すものとなった。ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)との出会いはさらに重要なものとなった。マンデラは、西欧風のビジネススーツではなく、作者の鮮やかなデザインと軽やかな木綿生地を着用した最初のアフリカ人大統領である。さらには他の国家元首たちや、ショービジネスやスポーツのスター、そしてもちろん、全世界の方々がすぐにその後に続いた。
作者のトレードマークはその生地であり、生涯にわたってグローバルなファッショントレンドと多種多様なアフリカの織物と知識を融合させ、そうすることで土地の伝統を生かし、進化させ続けてきた経験を持つ。本書は、作者とそのブランドの非凡な道のりを初めて辿った一冊である。作者の作品の技巧と価値は、グローバルさと豊かな文化遺産が合わさった、西アフリカにおけるファッションのスペクトラムのよりよい理解をもたらすものである。本書はファッションから繊維工業、移住労働、文化遺産、政治やショービジネスまで広範なテーマを探求し、過去から現代にまたがって弧を描く。