EDITH by Angela Hill

イギリス人写真家であり、ロンドンを拠点とする出版社兼書店「IDEA」の創設者の一人であるアンジェラ・ヒル(Angela Hill)の作品集。発売後直ぐに売り切れとなった前作『SYLVIA』からちょうど一年後の刊行となる。

被写体と写真家の間に深い親密性と理解を築きながらシルヴィア・マン(Sylvia Mann)の思春期を記録した前作は、多くの人々に、シルヴィアは作者の娘ではないかと思わせた。しかしそうではなく、作者の娘は "エディス"・オーウェン(Edith Owen)である。

本書は20年にもわたる記録の集積であるが、前作のように、常に不本意ではありながらもエディスが作者の第一のモデルとなった十代の頃を中心として構成されている。撮られることに対してしばしばエディスがあからさまに表す不快感は、本書における「思春期」へと実に真実味を与えている。被写体と写真家の関係が、あまりにリアルな一冊である。

本書の写真の多くが、ファッション関係のエディトリアルのために制作されたものである。メンズファッション誌『Man About Town』に向けてスコットランドで撮影されたもの、『Doesn’t Exist』誌に載った物語のために撮ったもの...。当時、エディスはアリ・マルコポロス(Ari Marcopoulos)コリエ・ショア(Collier Schorr)などの写真家たちにも撮影された。コリエ・ショアは本書の序文として「I don’t have a kid(私には子供がいない)」を寄稿している。

作者の自然主義的な特徴は、もしかすると雑誌のためではなく撮られた写真に最もはっきりと現れるのかもしれない。『Fantastic Man』や『The Gentlewoman』、『W Magazine』に向けて制作された商業的なファッション写真やエディトリアルは、ヘアメイクやライティング、レタッチを用いることなく35ミリフィルムで撮影され、映画の中でもとりわけドキュメンタリー映画の一シーンのように見えるよう作られた。エディスの写真は自宅の寝室やキッチン、家族旅行に向かう電車の中など、作者のスタイルが申し分なく体現される場で撮られている。まるでカメラがそこに存在していないかのようなこのスタイルで、作者はモデルのミカ・アルガナラズ(Mica Argañaraz)やレベッカ・ロンゲンダイク(Rebecca Longendyke)をも撮影した。

アンジェラ、[2023年9月30日、14:48:02]
私が彼女をあまりによく知っているという点が、モデルを撮影する時とは大きく異なります。彼女はカメラの前にいることを好まないので、だんだんと渡す報酬の額を増やさなければなりませんでした。始める時のエディスはだいたいとても不機嫌なのですが、一日が終わる頃には、私たちの間になにかしらの静けさと気づきが生まれます。彼女を撮影する時は、私の心にとても近い場所で撮ります。私が子供だった頃、いやいやながらも父親に引きずられていった場所です。そうしたすべての場所で、エディスを撮りました。父はいつもエディスが自身の母親であるエレンに似ていると言っていました。ある時から父のことを考えると感傷的になるようになって、エディスは恥ずかしさでもだえるのですが、理解はしているのだと思います。鳥類保護区のベースボールキャップやブライトン・ロックなど、その日のおみやげを手にくたくたで帰路について、テイクアウトをして、『Brooklyn 911』を一話見るんです

by Angela Hill

REGULAR PRICE ¥13,200  (tax incl.)

hardcover
128 pages
220 x 260 mm
color
2023

published by IDEA