12 HZ by Ron Jude [SIGNED]
アメリカ人フォトグラファー、ロン・ジュード(Ron Jude)の作品集。タイトルの「
12 HZ」は、一般に人の耳に聞こえる周波数の範囲の中で一番低い音である。また、プレートテクトニクス(プレート理論 ※註)から海の潮汐、森の中で起きている成長と衰退のサイクル、地質学的な時間的スパンの不可解さに至るまで「人が感知できない力」を象徴している。作者の写真は、このような現象の途方もないスケールと謎に包まれたしくみをほのめかす一方で、生態学的にも政治的にも危機を迎えた今の時代に、人間の活動を超えたより広い視野を手に入れたいという願いが込められている。溶岩洞や溶岩流、潮の流れ、氷河の氷、凝灰岩の凝結などのイメージは、有機生命体が生きることを可能にしている地球を構成する物質を表している。オレゴン州の溶岩台地、峡谷、洞窟から、アイスランドの氷河、ハワイのキラウエア山脈の溶岩流まで、撮影は世界各地で行われた。作者の写真は、人はどのように生きるべきか、何を間違えてしまったのかを教えようとするわけでもなく、風景を感傷的で従順な、所有できる何かに変えてしまおうとするものでもない。人の尺度で測った経験とは無関係に存在する物理的な世界の力を描き、理解しようとする。本作は「人が知覚できるかどうかに関わらず変化は常に起こっている」というシンプルな前提の下に成り立っている。大きな世界の仕組みのほんの一部に過ぎないが、本書は一歩下がってこのシステムに目を向け、自分自身のありのままの鼓動に耳を傾け、人もまたこのシステムのヒエラルキーの内側に存在しているという身の丈にあった感覚を肯定するよう呼び掛けている。
※註 1960年代後半以降に発展した地球科学の学説。地球の表面が、何枚かの固い岩盤(「プレート」と呼ぶ)で構成されており、このプレートが互いに動くことで大陸移動などが引き起こされると説明される。従来の大陸移動説・マントル対流説・海洋底拡大説など基礎として、「プレート」という概念を用いることでさらに体系化した理論で、地球科学において一大転換をもたらした。(Wikipediaより引用)