ANNETTE KELM: DIE BÜCHER by Annette Kelm
ベルリンを拠点に活動するドイツ人アーティスト、アネット・ケルム(Annette Kelm)の作品集。2020年にベルリンの「Museum Frieder Burda」が主宰するスペース「Salon Berlin」で開催され、2022年に「キール美術館(Kunsthalle zu Kiel)」で開催された巡回展覧会に伴い刊行された。本展「Die Bücher(英題:The Books)」では、1933年から1945年にかけて国家社会主義政権が行った中傷運動や迫害、禁止令の犠牲となった書物が作品として展示された。
1933年5月の焚書は、ドイツとオーストリアの多くの都市で行われた運動であった。ベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht)、アルフレッド・デーブリーン(Alfred Döblin)、ハインリヒ・ハイネ(Heinrich Heine)、フランツ・カフカ(Franz Kafka)、エルゼ・ラスカー=シューラー(Else Lasker-Schüler)、クラウス・マン(Klaus Mann)、トーマス・マン(Thomas Mann)、カール・マルクス(Karl Marx)、クルト・トゥホルスキー(Kurt Tucholsky)などの著名なユダヤ人、マルクス主義、平和主義の作家の本は、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)が「非ドイツ的」と誹謗中傷した後、書店や図書館から持ち去られて火の中に投げ込まれた。
作者は、正確かつシンプルな写真表現によって書籍群を見せている。かつて追放された作家、イラストレーター、出版社の作品や、ヴァイマル共和政とそれ以前の時代の並外れた芸術的・文学的多様性のために、新たな、あるいは継続的な公的プラットフォームを作り出している。同時に、作者はこの題材を今の時代に移し替えているのである。
本作品は、民主主義社会のモデルの価値と脆弱性、表現の自由と知的かつ芸術的な多様性を守る必要性、そして右翼勢力がこれらの価値に及ぼす脅威など、差し迫った問題に触れている一作に仕上がっている。