CIPRIAN HONEY CATHEDRAL by Raymond Meeks [SPECIAL EDITION]
リンゴが落ちる時、枝とリンゴの間には何がある?
誰でも見たことがあって、どこにいてもそれと分かる。
それなのにある夜、そこには何もないと言われてしまった。
- ライト・モリス( Wright Morris)アメリカ人フォトグラファー
アメリカ人フォトグラファー、レイモンド・ミークス(Raymond Meeks)の作品集。作者は、写真や本のフォーマットを用いて、視覚、意識、理解の境界が接する点を詩的に描き出した作風で知られる。本作では、そのまなざしを身近なところに向け、物質的な環境や一番親しい人達を我々は果たして本当に理解できるのかを精査している。これまで長らく作者は、我々が自分の身の回りの世界をどのように構築しているのか、自分を快適にしてくれるものや受け継いだもの、物質的な成功のしるしなどをどうやって持ち歩いているのか、植物や時を刻む置時計など様々なものを使ってどのように家を飾り付けているのかといったことに興味を持ってきた。偶然見つけた廃墟や手入れの行き届いていない芝生の中に隠されている、小さな罪に共通する手がかりを作者は探している。我々の自己中心的な現実における最も重大な問いは、知識と理解に関するものではないだろうか。早朝、まだ眠っているパートナーであり同じくフォトグラファーのアドリアナ・オルト(Adrianna Ault)を撮影している。オルトはちょうど、日々の家庭生活と最も深い眠りとが出会う、その境目に存在している。普段意識している世界の混沌や不確実性とは無関係な、力の抜けたトランス状態は、意識の表層下でのしばしの休息である。そしてそれは、我々が決してお互いを完全に理解することはできないという隠された不穏なメッセージをほのめかしている。
作者はかねてよりユニークなハンドメイド特装版を制作することで知られており、今回も版元とのコラボレーションにより実現。初版の作品集とともに、オルトのセルフポートレイトが写ったプリント、ソフトカバー冊子が木製のハンドメイドボックスに収められている。冊子は『errata』と題し、オルトが自身の庭で育てているイバラや絡みついたぶどうの枝を伐採している様子を作者が撮影したものを収録。うち1ページには、透明シートのプリント(サイン入り)が貼付けられている。ボックスは作者とオルト、オルトの2人の娘によって製作された。