PROPERTY by Felicity Hammond [SIGNED]
イギリス人アーティスト、フェリシティ・ハモンド(Felicity Hammond)の初作品集。21世紀に入ると建築を体験する方法に大きな変化が訪れた。高度に進化した技術がもたらす仮想世界というレンズを通せば、見取り図から建設後の環境を視覚化し、世界中の町や都市の未来図をデジタルで生成することが可能となった。本書は、ファウンド・イメージを使ったコラージュを通じて一見完璧に見えるイメージの世界を掘り起こし、それがいかに現実とかけ離れたものであるかを明らかにする。不格好で薄汚れた乱雑な都市の姿は、夢のように華やかな現代生活のイメージとは相容れない存在だが、ハモンドは2つの世界を衝突させることによってこの違和感を一層強調した。コンピューターのスクリーンに映る非現実的なイメージを印刷物に変換するといかに現実世界を無視して作られているか、途端に誰の目にも明らかになる。都市で生活する我々は、パワフルで概念的なイメージとイメージの根源である都市の現実との戦いを日常的に目の当たりにしている。本書では、写真作品と写真を使った立体作品やインスタレーションのイメージを組み合わせ、イメージとオブジェをぶつけ合っている。このことについて作者は都市開発の現場でも同じことが起きていると説明する。作品制作の延長線上にある本書では、素材として使ったファウンド・イメージやレンダリングされた画像がこれらが実際に存在する空間に対比して配置されている。立体的な形を与えられたファウンド・イメージは、レンダリングされた画像が物理的な空間をどのように規定するのか、イメージと空間の2つの表面が都市の領域でどのように作用しているのかを示す手段として使われている。本書に収められたイメージは静物のようでもあり、舞台装置のようでもある。これらがオブジェの痕跡なのか、それともイメージの痕跡のオブジェなのかは定かではない。人の手によって構築された環境が常に変化し続けるのと同じく、このセットは指示が出るのを待っている。