MEASURING INFINITY by Gego
「ゲーゴ(Gego)」として知られるドイツ系ヴェネズエラ人建築家、アーティスト、ゲルトルード・ルイーズ・ゴールドシュミット(Gertrud Louise Goldschmidt)の作品集。2023年3月から9月までニューヨークの「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum)」で開催された、作者にとって15年以上ぶりとなる大規模な回顧展に伴い刊行された。広範で決定的なカタログとも言える本書は、有機的な形態、直線的な構造、体系的な空間の探求を通じ、作者の抽象化への特別な進化とアプローチを辿る。
本書は、1950年代初頭から1990年代初頭にかけて制作された160点以上の彫刻、ドローイング、プリント、アーティストブック、テキスタイル、インスタレーションを含む作品のイメージを300点近く収録している。さらに、ラテンアメリカの現代美術の専門家らによる11編の図版つきエッセイを収録。建築とデザインにおける作者の貢献を含め、様々なメディアや分野にまたがる作者のアーティストとしての発展を辿り、作者が存命の間にラテンアメリカ、ヨーロッパ、アメリカで起きた芸術運動における実践、そしてカラカスで教師として20年勤めたことでの教育学における影響を考察する。図版入り年表では、作者の生涯と芸術的進歩、さらに自身の展覧会の歴史をなぞりながら、作者が生活をし、活動をした文化的に豊かな環境での文脈で語る。さらに、作者の最高傑作として広く知られる環境インスタレーション作品「Reticulárea」のイメージと、作者がパートナーと過ごしたカラカスの自宅兼スタジオで撮影された写真のシリーズを収録。一連の写真はパートナーが撮影している。作者の貢献は独特で目覚ましく、形式的かつコンセプチュアルな制作を行ってきたにも関わらず、今もアメリカではほとんど知られていないままである。重要な本書は、20世紀モダニズムの文脈における作者の貢献へのさらなる理解と評価を深める。
作者は、ヴェネズエラが近代国家として発展する真っ只中にアーティストとして活動を広げ、ラテンアメリカの現代美術における主要人物として20世紀における国境を超えた主たる芸術運動と交差しながらも、作品はあくまでも作者らしさを持ち続け、頭角を現した。ハンブルグで生まれた作者は、ドイツでエンジニアと建築士として教育を受け、ナチス・ドイツの迫害から逃れるため、1939年にヴェネズエラへと移住した。新天地カラカスでは建築家とデザイナーとして働いた後にアーティストとしてのキャリアを始め、1994年にこの世を去るまで活動を続けた。