DRAWINGS: A RETROSPECTIVE by Mel Bochner
1960年代から70年代にかけてニューヨークで発展したポストミニマル・アートとコンセプチュアル・アートの中心人物であるアメリカ人アーティスト、メル・ボックナー(Mel Bochner)の作品集。作者の独創的なドローイング作品とその制作を検証する1冊である。「シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)」は、「Seventy-second American Exhibition」(1973年)、「Idea and Image in Recent Art」(1974年)、「Mel Bochner: Language 1966-2006」(2006年)といった数々の展覧会で、長年作者の作品を世に紹介してきた。同様に「シカゴ美術館」で2021年に開催され、作者のドローイング作品群を回顧する初の展覧会となった「Mel Bochner Drawings: A Retrospective」の開催に伴い刊行された本書は、1960年代から現在に至るまでに制作された紙の作品や大型のウォール・ドローイングを含む作品を収録。ドローイングはコンセプチュアルアートの先駆者である作者にとって重要な制作手段であり続けた。
美術史家のアンナ・ロバット(Anna Lovatt)、美術評論家のバリー・シュヴァブスキー(Barry Schwabsky)らがエッセイを寄稿、作者の数十年に渡る制作活動の理論的な枠組みや、遊び心に溢れた実験的な試みについて探究している。本書は作者との密な協力に基づき企画、デザインされ、ウォール・ドローイングにおける哲学や、これまで行ってきた主要な展覧会の考察など、作者自身によるテキストも収録。
作者が1966年に開催した初の展覧会は、先駆的で重要なものであったと評価されている。言語と視覚芸術の慣習、またその関係を探究した作品で知られ、本書において紹介されているような、紙、キャンパス、そして壁といった様々なメディアを駆使し、実験的な制作を行ってきた。このような制作方法の全てがその活動の基盤であり、現代芸術に決定的な影響を与えている。