イギリス人アーティスト、アンジ・スミス（Anj Smith）の作品集。2023年11月から2024年1月にかけてニューヨークのギャラリー「Hauser & Wirth」で開催された、最新作を発表した個展に伴い刊行された。

ポートレイト、風景画、静物画のそれぞれのジャンルの狭間を行き来する作者は、ジェンダーやエコロジー、不安やエロティシズムが対峙する問題を探り、複雑に解釈した表現で描画する。結果、作者の（当時）最新のシリーズでは、生態学的に荒れ果てた風景に境界的な存在や生き物を登場させている。甘美とも言えるその情景は、鑑賞者に世界への認識の流動性を熟考させるよう誘う。

心理学者であり、アメリカのテレビ局「Showtime」によるコンテンツ『Couples Therapy』で知られるオルナ・グラルニク（Orna Guralnik）と作者との対談を収録。多様性、再野性化、転用といったテーマが語られており、あわせて作家であるクレア＝ルイーズ・ベネット（Claire-Louise Bennett）による詩的な介入により、ルイーズ・ベネット自身のうねりを持つ世界を見せ、読者が抱く現実・自然・自己の理解と戯れている。