LEIPZIG HAUPTBAHNHOF 1981/82 by Helga Paris
ドイツ人フォトグラファー、ヘルガ・パリ(Helga Paris)の作品集。1970年代のライプツィヒの中央駅には、叶えられなかった夢への喪失感が漂っていた。電車は悲し気な音を立てて軋み、スピーカーから流れるアナウンスはあまりにも巨大な駅舎の中に消え、誰も聞いてはいなかった。それは簡素でうるさくて機械的な場所だった。旅客と駅職員は電車の発着に合わせて別々の部屋で待っていた。駅の食堂「ミトローパ」では、食べ終わった食器は自分で片づけなくてはいけなかった。そこにはありとあらゆる社会階層の人々が24時間集まっていた。作者の80枚のモノクロ写真の中でその情景は、時間が静止しているように見える。電車に乗ろうと急いでいる人はほとんど出てこない。時計はどこにもなく、誰もが何かを待っている。トイレの清掃員はシフトが終わるのを。宝くじの売り子の女性は一山当てようという次の客を。年金暮らしの老人は一杯のビールを。このシリーズで作者はごく普通の人々によって形作られている「永久に続く待合室の風景」という特殊な状況を優れた技量で描き出した。ドイツで最も重要な写真家の一人である作者は、1980年代に古い歴史を持つ街ハレが衰退していく様子を記録し、ドイツ民主共和国の終わりを予感させた写真集『Diva in Grau』で有名になった。
by Helga Paris
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