ICON by Osamu Wataya
日本人写真家、綿谷修の作品集。2012年にタカ・イシイギャラリーで開催された展覧会「Icon」に伴い刊行された。
以下プレスリリースより抜粋
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィ―/フィルムは、6月22日(金)から7月21日(土)まで、綿谷修個展「Icon」を開催いたします。「Icon」は、2010年に発表された作品シリーズ「Juvenile」にて、幼年と成人の間で揺らぐジュヴナイル(年少)の時代を生きる少年/少女(世界の様々な場所に張りめぐらされた「アイコン」に対して独特の距離感を保つ存在)を捉えた綿谷が、「アイコン」そのものへのアプローチを試みた最新作です。
「アイコン」とは、人間のあり方に原型をもたらしてくれるものです。誰もがそこから、ある感情やイメージを身近に思い起こさせられ、集団としてのインスピレーション、そして神話的でもあるのです。もともとアイコンとは、古代ギリシャの神々や古代エジプトの死者、そしてキリスト教の神や天使の図像を指す言葉です。子どもたちや素朴な人たちにとって、神々たちのそうした具象的なイメージは受け入れやすいものであると同時に、むしろ必要なものでもあったはずです。
アイコンはまた、忠誠心、権力、愛国主義、憧れ、そしてパラノイアなどを呼び起こすものでもあります。そして、アイコンが身に纏う色も、勝利、真実、純粋など、様々な意味を秘めています。アメリカのカウボーイや星条旗はそうした意味で、アイコンの最たるものだと言えるでしょう。
目に見える形、すなわちフォルムこそがアイコンの原理です。時には、実在するものであってもそのフォルムは一瞬にして消えてゆき、残像が写真になった途端に写真のもつ特性に近づいてくるわけです。裸眼で見ることのできないカウボーイのぶれたイメージ、それは私にとって理想的フォルムとも言えるアイコンの写真なのです。つまり、鏡に映した姿のようなものなのです。
綿谷修
2012年4月
意図的にブレた構図を特徴に、カウボーイや星条旗といったクリシェが「アイコン」として機能していくメカニズムを明かすようでもある綿谷修の最新作を、この機会に是非ご高覧ください。なお、展覧会と合わせまして、ラットホールギャラリーより作品集『Icon』が刊行されます。