アメリカ人アーティストのシモーネ・リー（Simone Leigh）による作品集。本書は2023年4月から9月まで「ボストン現代美術館（The Institute of Contemporary Art Boston / ICA Boston）」で開催祭れた展覧会に伴い刊行された。

マルチメディアを駆使してコミュニティ、ブラックフェミニズム、在外アフリカ人（ディアスポラ）の伝統と物質文化を探求する作者の初の広域にわたるモノグラフ。過去20年もの間、ブラックフェミニズムの主観性に関わる問いを現代美術の言説の中心に据えた作品を制作し、彫刻、動画、インスタレーション、社会的実践を通じて、視覚的・物質的文化における人種、美、コミュニティの概念を作者は探求してきた。作品において歴史上の時代、地理、伝統といった幅広いテーマを取り上げ、アフリカン・ディアスポラに関わる素材や、昔からアフリカの芸術や建築と関連づけられてきたかたちを具体的に参照する。

本書には、様々な表現手段やトピックに沿って作品を読み解く新たな文章を多数収録。作者にとって初めての集大成的な巡回展の開催に合わせて出版された本書には、長年コラボレーションを行ってきたアーティスト陣の寄稿、多様な洞察と視点を提供する新たな論考、作者の声に焦点を当てた対談も含まれている。

さらに、「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」で高い評価を受けた作品をはじめ、20年のキャリアの中で生み出された数々の作品を豊富な図版で楽しむことができる。リサーチ資料から抜粋した画像からなる特別セクションでは、そのリサーチの方法論を紹介し、作品のあらゆる側面にしっかりと向き合うことを促している。展覧会を機に、画期的なアーティストの複雑で深く心に響く作品への全体的な理解を深める機会を与えてくれる一冊となっている。