SHAZAM by Richie Shazam
アメリカ人モデル、アーティスト、活動家であるリッチー・シャザム(Richie Shazam)の作品集。イギリスの出版社兼書店「IDEA」がこれまで手掛けてきたタイトルの中でも、最もエキサイティングで、超感覚的で、超視覚的にまとめられた一冊と言えるだろう。作者は、思い通りの本を作る自由を与えられた。アーティストの中には、このような大きすぎる課題に圧倒されるかもしれないが、作者はそうではない。その創造性、個性、イメージ群は本書に収まらないほどである。それは、まるで荷物が溢れ出してしまったスーツケースであり、ニューヨークへ向かい人生を再スタートさせるために必要なものがすべて詰まっている。アメリカ人俳優、モデルであり作者の親友であるジュリア・フォックス(Julia Fox)による序文を収録し、表紙デザインをアーティストのジャスティン・ヘイガー(Justin Hager)、スタイリングをブリアナ・アンダロール(Briana Andalore)が手がけている。
実の家族に見放された作者にとって、本書は作者が築いたクリエイティブファミリーとアーティスティック・ヘイヴンを記念する一冊である。スタジオという隠れ家のおかげで、作者はすべての防護服を脱ぎ去り、境界線やルールなしに、自由に、そして一緒に、その場で創作することができるようになった。登場人物は、ファンタジーの一部であり、作者の真の姿であり、複雑かつ自発的な共同作業のプロセスによってすべて実現されるのである。
「これは、私が自分のアイデンティティを取り戻し、レンズの力を回収し、写真のスキルを披露し、私のストーリーを全て伝えることができるようになったというものなのよ。権力者に対する『F U(エフ・ユー)』のようなもの。『エボニー(アフリカ系アメリカ人向けの月刊誌)』が 『フレーバー・オブ・ザ・ウィーク(Flavor Of The Week)』をやっていたように、私は毎週、みんなのフレーバーであり続ける。私は何でもできるのよ。」
「私の創造的な脳は、すべてのことを可能にしている。それは私の声であり、私の目である。私はワンストップショップで、何でもできる機械である。そして、私は機械でありたい!女の子は十倍頑張らないとね。私はそれを活用しているのよ。だから、この本は地獄のような赤で覆われているーー『地獄の本 』だよ!」
本書は、当然、政治的であるが、それをここまで対立的にしてしまったのはアメリカである。
「この本は、プライド(月間)を目前にして刊行され、今年のプライドは、クィア個々人に対して世界レベルでかなり強硬になったので、抗議でなければなりません。この本は、特に、私たちの権利が剥奪され、私たちを殺そうとしているが、私たちの精神を殺すことはできない、この激しく恐ろしい時代に、家族やコミュニティの美しさを強調したい。この本は、クィアのユートピア/ディストピアとして今必要不可欠なものである。これが私たちです。私たちはここにいて、常に10歩先を行く。あなたは、あなたの支えとなって、あなたを...存在させる手助けをするトライブ(族)を見つける必要がある。」
そして、作者のパートナーであり映像作家のベン・ドラギ(Ben Draghi)も数々の写真に登場する。
「パートナーと親密に制作し、彼女のビジョンを実現する手助けができることは、とても光栄なことです。この本は、まさしくリッチー的であり、彼女の精神のユニークさを本当によく捉えていると思う。カオスであり、そこから生まれるすべての美である。美を追求し、新しいもの、真実のものを作る。そして、その後にすべてを理解する。ファンタジーに身を任せる。」
ジュリア・フォックスの序文からの抜粋:
「この序文を書くにあたり、リッチー・シャザムを紹介する機会を与えられたことに誇りを感じずにはいられませんが、正直、今さら彼女を紹介する必要はないでしょう。」
「本書では、複雑な多次元創造精神の心の中を垣間見る体験をすることができます。自己発見、変容、創造的進化の旅へと誘われることでしょう。社会的規範の束縛から自由に生きる力、そしてバイナリー(二元論)に逆らうことで生まれる無限の美を、あなたは身をもって知ることになるのです。」