A FIELD MEASURE SURVEY OF AMERICAN ARCHITECTURE by Jeffrey Ladd
アメリカ人フォトグラファー、ジェフリー・ラッド(Jeffrey Ladd)の作品集。米議会図書館所蔵の「Historic American Buildings Survey(HABS、アメリカの歴史的建造物に関する調査)」に収められている約50万枚の写真や資料をもとに、メイソン=ディクソン線の南と北をジグザグに移動しながら西に向かう、架空の「片道ロードトリップ」が味わえる1冊。現在はドイツに拠点を置く作者は、民主主義が脅かされていた頃のアメリカの肖像を描き出すため、自分の作品の代わりにHABSの資料を使っている。
ウォーカー・エヴァンス(Walker Evans)の撮った社会派ドキュメンタリーやゴードン・マッタ=クラーク(Gordon Matta-Clark)らによる既存の建築への介入などに着想を得た作者は、この写真に漂う静寂を巧みに利用し、彫刻的、政治的、法医学的、空想的なものが美しさと脆弱さを併せ持つ風景の中で一つに溶け合った、幾つもの意味を読み取ることができる空間を創り出している。
本書のページをめくっていると、1人の人物による作品に見えたものが実は何十人もの写真家の手によるものだということが明らかになったり、遠い過去について書いたように見える文章が実は我々の予想よりも現在に近い出来事について語っていたりすることがわかってくる。本書は、HABSというアーカイブの素晴らしさはもちろん、そのイメージから作り出すことのできる多様な意味にも光を当てている。
by Jeffrey Ladd
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