スペイン人アーティスト、ジョアン・ミロ（Joan Miró）の作品集。2015年4月から7月までニューヨークのギャラリー「Nahmad Contemporary」開催された展覧会に伴い刊行された。作者の研究者であるジャン＝ルイ・プラ（Jean-Louis Prat）によるテキストを収録した、大判サイズの一冊。

本展は、1960年代から1970年代に生み出された作者の傑作を集めた個展である。20世紀における重要な革新的アーティストの一人として、作者は美術の世界史の記録に偉大な人物として名を残した。その作品群には、時空間を超越し、普遍性を捉えた、詩的な領域にあるメタファーと象徴主義が宿っている。それゆえに、作者は今日に至るまで常にインスピレーションを与え続けてきたのである。作者にとって最期の20年間の主要な絵画作品を再分析することによって、本展は、カタルーニャの巨匠たる作者によるアメリカのアブストラクト・アートへの複雑かつ深遠なる探究心に新たな光を投げかける。

若きアメリカ人に対し、1968年の最後の渡米後の作品でより激化した非常に解放的でジェスチュラルなエネルギーという形で示された作者の反応に着目した。アメリカの絵画作品について作者は「私たちが受け取れる自由を、限界を超えてどこまで行けるかということを見せてくれた。ある意味では、私を解放してくれたのだ」と言っている。そうした対話を通して、空中の鳥にもよく似た作者の想像的精神は、その成熟した作品で無比のレベルにある詩性を実現させた。滴りから、飛び散り、手形まで、作者は新たな種類の自由を用いることができ、それによってそのヨーロッパのルーツから生まれた洗練された詩的要素と、アメリカ的アヴァンギャルドの束縛されない楽観論を調和させ、融合させることに成功しているのである。