IT NEVER ENDS by John Armleder
スイス人アーティスト、ジョン・M・アムレーダー(John M Armleder)の作品集。作者は、20世紀末から21世紀に活動したアーティストの中でも最も重要かつ高く評価されている人物の一人である。代表作の「Furniture Sculptures」からアーティストコレクティブ「Écart」としての「フルクサス(Fluxus)」のパフォーマンス、多様な絵画シリーズからドローイング、印象的なインスタレーションや壁画から友人のアーティストたちとのコラボレーションによる数々の作品まで、あらゆる芸術分野にまたがる豊饒な作品群を生み出してきた。
本書は、2020年から2021年にブリュッセルの「カナル・ポンピドゥーセンター(KANAL - Centre Pompidou)」で開催された同名の展覧会の後に刊行され、作者が構想・実行した大胆な大規模学際的プロジェクトを包括的に記録した一冊である。展覧会では「カナル・ポンピドゥーセンター」の空間を活かし、招聘アーティストによる作品やさまざまなコレクションの展示で構成される展示を実施した。作者による多次元的な展覧会を追った、アーティストブックとカタログの中間に位置するといえる仕上がりであり、集団による実験の没入体験をアーカイブ写真と深い対話を通じて再現するように作られた独自のフォーマットが、100人以上のアーティストの作品を通じて作り上げられた巨大な自画像のような世界へと引き込んでいく。
本作は、作者が実施した「カルトブランシュ(白紙委任状)」の実験である。この集団による学際的な展覧会は、「カナル・ポンピドゥーセンター」の「ショールーム」の6フロアを使って9カ月にわたって開催された。また本展は、シトロエンが所有していた1930年代建造のガレージの前面に広がる6,000平方メートルのこの壮大なスペースが改修工事のためにクローズされる前の最後の展覧会となった。
作者が「常に動き続ける多次元的で生き生きとした芸術的な表現」として構想した本展においては、特別にデザインされた大規模なインスタレーションで構成された没入感のある風景の中で、コミッションワーク、グループ展、コンサート、パフォーマンスなど、多彩なプログラムが繰り広げられた。作者の史上最も野心的なプロジェクトであるこの『It Never Ends』は、個展、回顧展、作家の選択といった従来の展覧会の形式とは異なる、よりハイブリッドな体験を提供する。これは先述したように一種の集合的な自画像であり、ホスピタリティ、コラボレーション、友情などのテーマを探求するアーティストにとっては、他者の作品を通じて自分自身を(再)提示する手段でもある。
本展は2020年4月開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより延期され、最終的には同年9月に開催され、2部構成で2021年4月まで続いた。展覧会のかたち、アクセシビリティ、反響が変化する一方で、この非典型的なプロジェクトのアーカイブだけでなく、コラボレーションのダイナミズムの続きとなる出版物を作り出す必要が見えてきた。この特別な一冊はそのような経緯を経て、豊かなビジュアルによるドキュメンテーションとアーティストやキュレーターとの深い対話を通じて作者のキュレーター的な実験への没入体験を再現するものとして、ブリュッセルを拠点とするデザイナー集団「Sunny-Side-Up」により構想され、実現した。