ORLANDO by Klodin Erb
スイス人アーティスト、クローディン・エルプ(Klaudin Erb)の作品集。絵画シリーズ「Orlando」を収録する。本シリーズは、20世紀を代表するイギリス人作家のヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)の長篇小説『オーランドー』に基づいており、不可思議に性転換されながら5世紀以上生き続ける詩人の生涯が記されている。約200点に及ぶ本シリーズは、様々なスタイルによって描かれた小さいポートレートである。モチーフは男性、女性と性別が未特定の人物であり、肖像画の考察であると同時に、「美術史とそれに関わり、内在する時間を探求したものである」と作者は述べる。さらに、絵画家としてのアイデンティティを探っている。
作者は、「イメージ群の膨大な量でそれぞれの顔に没頭し、さらに自分を失うことができるようになる。鑑賞者は時代を超えた普遍的な存在へと変容させる。結果、境界や身分証明のパラダイムは溶け込んでゆき、『私はいくつもの人(I am many)』や『私はあなた(I am you)』というように、より大きな文脈に再構築される。」と綴る。
作者のアイデンティティに関する探求は、ある日チューリッヒ湖に浮かぶパビリオンで食事会をしながら交わした会話から具体化された。このイベントの目的は、コスチュームとメイクを身につけることで日常のエゴを捨て、パフォーマンスアートのディナーという実験的な場で超自我に入り込み、作者のシリーズ「Orlando」のテーマであるアイデンティティ、ジェンダーと模範、時間の構築、老化と永久の命への憧れ、AI(人工知能)、最後の人類などについて話し合うことであった。この対談の記録は本書に収録されており、それは本書に掲載されているすべての内容を結びつけている。
キュレーターのキャスリーン・ビューラー(Kathleen Bühler)、現代美術雑誌「Parkett」の創設者兼編集者であるジャックリーン・ブルクハルト(Jacqueline Burckhardt)、編集者のフィン・キャノニカ(Finn Canonica)、作家のグレゴリー・ハリ(Gregory Hari)、報道記者・作家のスザンナ・ケーベルレ(Susanna Koeberle)、報道記者のニーナ・クンツ(Nina Kunz)、グラフィックデザイナーのカタリーナ・ラング(Katarina Lang)、作家のロミオ・コヨテ=ローゼン(Romeo Koyote Rosen)とのインタビューも収録。