THE CORPOREAL LIFE OF SEAFARING by Laleh Khalili
ロンドン大学東洋アフリカ学院の教授であり、中東政治学者、ラーレ・ハリーリ(Laleh Khalili)の作品集。船員の身体は、グローバルな権力のシステム、昔から続く海運の伝統、ジェンダー的・人種的な圧力のすべてがのしかかっている支点である。重要かつ新たな論文でこの研究者は、現在進めている調査と貨物船で旅した経験をもとに、こうした労働者の具現化された生活を探求した。作者の調査の目的は、孤独、喪失、暴力、賃金の剥奪、搾取的な船主など数々の苦難に満ちた体験とともに、喜びや連帯を感じる僅かなひと時にも向けられている。船というユニークな舞台において、海での仕事に関連する様々な身体性のかたちと、船員の生活と仕事を取り巻く制度と身体との関わり合いを追いかけていく。
作者自身が撮影した写真が随所に散りばめられた本書においては、学術的・文学的な2つのスタイルの文章で現代の海商の物質的・物理的な現実が注意深く、想像力豊かに描写されている。また、フェミニストや人種資本主義の研究者の洞察を活用して、資本の蓄積を目的とする企業とそれを形成している人種的・ジェンダー的ヒエラルキーにおいてしばしば忘れ去られ、見放されている人々の生活を中心に据える。
本書はイギリスの出版社「MACK」が刊行する、文化論者やキュレーター、アーティストが1つのテーマや作品、思考をテキストで掘り下げるシリーズ「DISCOURSE」の1冊として刊行されている。
「ハリーリは簡潔な言葉で非常に多くのことを表現する。現代の巨大な船舶を維持している、ますます孤立していく身体に焦点を当てたこの論文は、貪欲な私たちの都市テーベに物資を供給する船で働く船員たちの大きな犠牲を強調している」サリー・スタイン(Sally Stein)
「この重要な研究は、世の中を動かしている「労働する身体」―手、足、目、身体と魂、苦悩と連帯などーについて説明する。そしてその過程で、世界経済のつながりと分裂が見えてくる」スティーブ・エドワーズ(Steve Edwards)