PENUMBRA by Rich Stapleton

イギリス人フォトグラファー、リッチ・ステープルトン(Rich Stapleton)の作品集。

われわれ東洋人は(…)美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える
&mdash 谷崎潤一郎

モノクロ写真の作品が収録された本書は、新作に加え、パタゴニアからブータン、ロサンゼルス、バースまで、世界各地で6年以上にわたって撮りためられたアーカイブから厳選された作品が収録されている。

「半影」を意味するタイトルは、ここに収められている一連の作品に共通する、暗い雰囲気と色調を暗示している。イメージにおける半影とは、明るい焦点でも暗いぼかしでもない。半影とは対象物の輪郭を定義するものであり、イメージが暗闇からゆっくりと浮かび上がってくる、暗室での写真の現像を想起させる。ロサンゼルスの自宅の庭で撮影された一枚の写真では、揺れる2輪のカラーリリーの茎が背景の暗闇に徐々に飲み込まれていくように見える。

本書において、自然、特に植物、動物、海の風景というテーマが繰り返し登場する。これらのイメージの多くは作者にとって個人的な意味合いを持っているが、一家が初めてロサンゼルスに移り住んだ頃にベニスビーチで撮影された海の風景もそのひとつである。背景の離陸中の飛行機は、過去数年間、作者の人生において旅が担ってきた役割を象徴し、前景には新たなスタートを象徴する一本の波が打ち寄せている。このイメージには、その瞬間が捉えられている。自然というテーマが最もよく分かるのは、表紙のガラパゴスゾウガメのイメージである。まるで天体のような巨大な甲羅は、地球を背中で支えている神話の中の世界亀を連想させる。

by Rich Stapleton

REGULAR PRICE ¥11,000  (tax incl.)

hardcover
96 pages
230 x 279 mm
black and white
2023

published by LIBRARYMAN