ベルリンを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、ルイス・アルベルト・ロドリゲス（Luis Alberto Rodriguez）の作品集。人生の自然落下、アイデンティティの構築、精神的な運命との繋がりを探る一つのシリーズを通じ、写真に対する演出や具体的なアプローチをそぎ落としていく一作。

フランスの思想家であるシモーヌ・ヴェイユ（Simone Weil）の神秘的な思想に影響を受けながらも、自身の剥き出しなポートレイト作品とヴェイユが生涯取り組んだこととは一線を引く。苦しみと超越性の間に生じる関係や純粋さを求めた本書のタイトルである「O」は、雑音、ハッとした息遣い、吐息、循環、全ての音、開かれているシンボル、ゼロ、リセット... その間で超越性に語りかけている。

身体、年齢、バックグラウンド、アイデンティティの異なるキャストを採用し、パワーと消失した制御との間で揺れ動くようなヌード作品を創り出す。作者が被写体を解放するように創作に挑むことで、その身体は捻れ、崩れながらも次第にバランスを取り戻し、優美に持ち上がり、やがて純粋さに達する。

我々は、自分が向かう方向をどれだけコントロールしているのだろうか？着地点はどれほど柔らかいのだろうか？

作者は、その印象的なヌード作品と、作者の出身地ドミニカ共和国を思い起こさせるコーヒーカップを用いた占い「タッセオグラフィー（※註）」が描くイメージとを対話させる。カメラの前に現れ、そして消えゆく者たちの力強さや美しさと精神的に関わっていく。本書は、我々の今、我々の自衛本能の状態、そしてまだ見ぬ未来における不安定な様子を想起させる。

※註 別名「紅茶占い」。紅茶を飲み終えた後、カップに残った茶葉が描く形で占う。