ニューヨークとイタリアを拠点として活動するフォトグラファーであり映像作家、サム・ユーキリス（Sam Youkilis）の作品集。即座に、そして惜しみなく日常生活をインデックスすることで、空間と時間を超えて、この528ページにわたる人間の体験のタイポロジーをまとめた初モノグラフは届くであろう。

作者は過去6年間、自身の携帯電話を通じ、写真作品のアーカイブを継続的に築き上げていった。感覚的に捉えられた短くも没入的な映像は、人間の経験における普遍的なテーマを集め、深淵で人類学的、広範でありながら不完全な何かを呼び起こすべく、カメラ付き携帯電話のカジュアルな言語を用いている。作者の作品は、世界を経験する一つの立場から湧き出る。そこには自身の作品が自由に行き交う中での何気ない気安さを超えた深みを孕んでいる。

作者にとって初の刊行物となる本書は、人間の行動パターンとの関与の深さをアーカイブしており、多様で広範なテーマがところどころで散りばめられている。本書はビデオスチルのみで構成されており、午前7時7分、午後12時33分という時刻から、メイキングされていないベッド、カットする行為、入り口、踊るカップル、ロマンスのジェスチャーまで、あらゆるイメージを本書が作者のデータベースから捜し出している。

500ページ以上におよぶ密度の高いシークエンスを見せる本作は、被写体を鼓舞し、世界中のさまざまな場所において深く眠る本質を解き放ちながら、人間の喜びと精神的な繋がりの源泉としてアーカイブ（保存記録）とタイポロジー（類型）を活性化している。作者は、構図や色、明暗のコントラスト、フレーミングに細心の注意を払うことを通じ、写真という媒体に対して敬意を払いながら、儚さと誠意のどちらも関わっていくことで、この現実を抱きしめているのである。