アフリカ系アメリカ人アーティスト、ケリー・ジェームズ・マーシャル（Kerry James Marshall）の作品集。2018年にロンドンの「David Zwirner」で開催された展覧会に伴い刊行された。存命のアメリカ人画家の中でも重要な1人である作者が手がけたこれまでにない新作を掲載している。本作において作者は、具象的な作品と非具象な作品の両側面に視野を広げつつ、美術史、人種、ジェンダーを明確に扱っている。同時に、美術作品が世界で、またアート市場でどのように受け取られるかを我々に再考させている。オークションカタログの複製や抽象画、日常風景など、作者は絵画作品自体の主題を行き来しながらも、そこには歴史や支配的な白人の築いてきたものに対する批判が存在することを示唆している。

加えて、アメリカ人作家、フォトグラファー、美術史家であるテジュ・コール（Teju Cole）と美術批評家であり編集者のハル・フォスター（Hal Foster）によるエッセイは、作者の卓越した視点や、「Untitled (Underpainting) 」（2018年）のような複雑に層を重ねたような作品、その芸術哲学を読み解くための鍵となる。